この記事は、2027年NHK大河ドラマ『逆賊の幕臣』(2027年1月10日放送開始/主演・松坂桃李)の関連記事です。▶ 大河『逆賊の幕臣』特集に、関連記事とキャスト一覧をまとめています。
史実をふまえたうえで、「もしあのとき別の道を選んでいたら」を管理人なりに考えるシリーズです。前半は史料にもとづく史実、後半の「もしも」の部分は管理人の考え(推測)です。

万延元年(1860年)、日米修好通商条約の批准書を交換するため、幕府は77人の使節団をアメリカへ送りました。日本の公式な使節が、初めて太平洋を渡ったのです。
この使節団を率いたのが、正使・新見正興(しんみ まさおき)、副使・村垣範正(むらがき のりまさ)、そして目付・小栗忠順の3人でした。大河ドラマ『逆賊の幕臣』の序盤の山場になるはずの渡米。主人公・小栗と一緒に海を渡った2人は、どんな人で、帰国後どうなったのかをたどります。
新見正興・村垣範正は何をした人?—先に答え
| 新見正興 | 村垣範正 | 小栗忠順 | |
|---|---|---|---|
| 使節での役 | 正使(使節団の代表) | 副使(代表の補佐) | 目付(監察役) |
| 当時の役職 | 外国奉行・神奈川奉行 | 外国奉行・箱館奉行 | 目付 |
| 生没年 | 1822〜1869年 | 1813〜1880年 | 1827〜1868年 |
| 渡米時の年齢(数え) | 39歳 | 48歳 | 34歳 |
| 知られていること | 大統領ブキャナンに国書を渡した使節の顔 | 『遣米使日記』で、アメリカの見聞をこまやかに書き残した | 造幣局で小判と金貨を分析させ、通貨の交換比率を問うた |
| 帰国後 | ほどなく第一線を退き、明治2年に没する | ロシアとの交渉などを担い、明治を生きる | 勘定奉行などを歴任し、幕府の改革を担う |
年齢は数え年です。
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遣米使節とは—なぜ3人だったのか
安政5年(1858年)に結ばれた日米修好通商条約では、批准書(条約を正式に認める文書)をワシントンで交換すると決められていました。そのために送られたのが、この遣米使節です。
使節は、代表の正使、補佐の副使、そして監察の目付という3人の組み合わせでした。目付は、正使と副使がきちんと務めを果たしているかを見届け、幕府に報告する役です。幕府の外交には、こうした「お目付け役」がつくのが決まりでした。
| 日付(1860年) | できごと |
|---|---|
| 2月 | 横浜からアメリカの軍艦ポーハタン号で出航。護衛に咸臨丸がついた |
| 3月 | ハワイを経てサンフランシスコに着く |
| 4月 | パナマ地峡を鉄道で越え、大西洋側へ |
| 5月 | ワシントンで大統領ブキャナンに国書を渡し、批准書を交換 |
| 6月 | フィラデルフィアの造幣局、ニューヨークを訪れる |
| 11月 | アフリカ南端・喜望峰をまわって世界を一周し、品川に帰る |
月は西暦です。出航は万延元年1月、帰国は同年9月(いずれも旧暦)にあたります。

正使・新見正興—使節団の「顔」
新見正興は文政5年(1822年)生まれの旗本で、外国奉行と神奈川奉行を兼ねていました。官名は豊前守。使節団の代表として、ワシントンのホワイトハウスで大統領ブキャナンに将軍の国書を手渡したのは新見です。
アメリカの新聞は、狩衣に烏帽子という正装でパレードに臨む使節たちの姿を大きく報じました。とりわけ、落ちついた物腰の新見は、アメリカの人々に「日本の貴人」という強い印象を残したといわれます。
帰国後、新見は外国奉行などを務めましたが、ほどなく政治の第一線を退きます。明治2年(1869年)、数えで48歳で亡くなりました。使節団の代表という大役のわりに、その後の記録が少ない人物です。

副使・村垣範正—アメリカを書きとめた人

村垣範正は文化10年(1813年)生まれで、3人の中ではいちばんの年長でした。官名は淡路守。若いころから勘定方で働き、箱館奉行として蝦夷地や樺太の調査、ロシアとの交渉にあたった、北の外交の経験者です。
村垣が名を残したのは、旅の様子をこまやかに記した日記(『遣米使日記』)によってでした。蒸気機関車、ガス灯、議会の議論、男女が手を取って踊る舞踏会—初めて見るアメリカの姿に驚き、ときに戸惑う様子が、率直な言葉で書かれています。幕末の日本人がアメリカをどう見たかを知る、貴重な記録です。
帰国後も村垣は外交の仕事を続け、文久元年(1861年)のロシア軍艦による対馬占領事件では、箱館でロシア領事と交渉しています。明治13年(1880年)、数えで68歳で亡くなりました。
目付・小栗忠順—造幣局で問うたこと
3人の中でいちばん若い小栗は、使節の監察役でした。小栗がこの旅で名を残したのは、フィラデルフィアの造幣局での一件です。
当時、日本の金貨は外国の銀貨と不利な比率で交換され、大量の金が国外へ流れていました。小栗は、日本の小判とアメリカの金貨を造幣局で分析させ、金の含有量を比べさせたと伝わります。交換比率を改めさせることはできませんでしたが、外国の役人を相手に、道理で一歩も引かない小栗の姿は、アメリカ側にも強い印象を残しました。

帰国後、小栗は外国奉行に昇進し、のちに勘定奉行として幕府の財政を預かります。アメリカで見た造船所や工場が、のちの横須賀製鉄所につながっていきました。
3人のその後を比べる
| 新見正興 | 村垣範正 | 小栗忠順 | |
|---|---|---|---|
| 帰国直後 | 外国奉行など | 外国奉行・箱館奉行 | 外国奉行に昇進 |
| 幕末 | 第一線を退く | 対ロシア交渉、のち作事奉行など | 勘定奉行・軍艦奉行・海軍奉行並など |
| 最期 | 明治2年、48歳 | 明治13年、68歳 | 慶応4年、新政府軍に斬られる。42歳 |
同じ船で世界を一周した3人のうち、アメリカで見たものを幕府の改革にいちばん生かしたのは、いちばん若い目付の小栗でした。そして、明治を見ることができなかったのも小栗だけでした。
大河ドラマでの見どころ
新見正興と村垣範正の配役は、まだ発表されていません(2026年10月時点)。遣米使節の場面では、ホワイトハウスでの国書の受け渡し、ニューヨークのパレード、造幣局での小判の分析が描かれるはずです。主人公の小栗だけでなく、正使と副使がどう描かれるかにも注目です。

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参考資料
- 村垣範正『遣米使日記』
- 写真:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
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小栗忠順をもっと知る本
記事の内容をもっと知りたい方に、小栗忠順を扱った本を紹介します。
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2027年NHK大河ドラマ
『逆賊の幕臣』大河ドラマ特集
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