2027年 大河ドラマ『逆賊の幕臣』特集——主人公・小栗忠順を史実から読む

二〇二七年一月十日、NHK大河ドラマ『逆賊の幕臣』が始まります。主人公は幕臣・小栗忠順(小栗上野介)、演じるのは松坂桃李。脚本は安達奈緒子です。

横須賀に日本初の近代造船所を作り、慶応四年の閏四月に取り調べもないまま斬られた人物です。放送される年は、ちょうど小栗の生誕二百年にあたります。

このページでは、当サイトの小栗関連の記事をまとめています。ドラマが始まる前に、史実のほうを押さえておきませんか。

小栗忠順を読む

この人は、何をした人なのか

幕末の幕臣で、勘定奉行を四度務めました。やったことを並べると、明治政府がのちに手をつけたことのほとんどが入っています。

  • 横須賀製鉄所——日本初の本格的な近代造船所。総額二百四十万ドル。第一号ドライドックは、いまも横須賀基地で現役です
  • 兵庫商社——資本百万両。英語の company を「商社」と訳したのは小栗だとされます
  • 郡県制の建議——廃藩置県と同じ構想を、幕府側で先に唱えました
  • フランス式の軍制改革、横浜フランス語伝習所、滝野川反射炉、築地ホテル館
  • 兌換紙幣、理工系と外国語の学校、ガス灯、鉄道、郵便、電信の構想

大隈重信は「明治政府の近代化政策は小栗忠順の模倣にすぎない」と言い、司馬遼太郎は「明治国家の父の一人」と書きました。

「逆賊」とは何か

タイトルの由来は、その最期にあります。

慶応四年閏四月六日の朝、小栗は上野国の烏川の河原で斬られました。取り調べは一切ありませんでした。しかもその五日前、持っていた大砲と小銃をすべて包囲側の三藩に自分から引き渡しています。罪状の根拠となる文書は、いまも出てきていません。

それから六十四年後の昭和七年、地元の人が終焉の地に碑を建てました。刻まれているのはこの一行です。

偉人小栗上野介 罪なくして此所に斬らる

発表されているキャスト

二〇二五年三月の主演発表から、これまでに六回にわたって二十四名が発表されています。

主演(2025年3月発表)

俳優 どういう人物か
松坂桃李 小栗忠順 幕府の天才官僚。遣米使節で西洋を見て、軍制改革と造船所建設を進めた。新政府から「逆賊」と見なされ歴史から葬られる

第2弾(2025年10月)

俳優 どういう人物か
大沢たかお 勝海舟 無役の貧乏旗本から蘭学で身を立て、咸臨丸で太平洋を渡る。小栗のライバルであり同志。制作統括は「時に同志となり、時に対立しながらも、誰よりも理解し合っている」と説明

第3弾(2026年2月)——小栗家と、その周辺

俳優 どういう人物か
北村有起哉 小栗忠高 忠順の父。中川忠英の四男で小栗家の婿養子。温厚な「昼行燈」だが心に秘密を抱える
鈴木京香 くに 忠順の母・邦子。家付き娘で、歯に衣着せぬ物言いの「小栗家の太陽」
上白石萌音 みち 忠順の妻・道子。播磨林田藩主の娘。珍しい物や道具を好み、記録と帳簿の管理が得意という設定
岡部たかし 井伊直弼 彦根藩主・大老。開国を主張し、小栗を遣米使節に抜擢する
中村雅俊 安積艮斎 儒学者。私塾「見山楼」で忠順の師となる。ペリー来航の五年前に列強の危険を説いた

第4弾(2026年4月)——青春をともにした友人たち

俳優 どういう人物か
青木崇高 栗本鋤雲 生涯の盟友。蝦夷地開拓に尽力し、フランス公使の通訳として対仏外交の最前線へ
高橋光臣 駒井朝温 三歳上の幼なじみ。次男を小栗家の後継ぎとし、桜田門外の変では吟味役を務める
宮野真守 滝川具挙 小栗家の隣人。ムードメーカーから大目付へ。徳川幕府絶対派
芝大輔 朝比奈昌広 将軍の小姓を務めた旗本。「万事につけて如才がない」。長崎奉行など要職を歴任
荒川良々 三野村利左衛門 小栗家の奉公人から三井の大番頭へ。小栗から「リザ」と呼ばれる

第5弾(2026年6月)——江戸城で出会う人々

俳優 どういう人物か
宅麻伸 徳川家慶 十二代将軍。「そうせい様」と呼ばれた温厚な将軍。天保の改革を実施
ふかわりょう 徳川家定 十三代将軍。病弱で内向的、「お飾り」扱いされる孤独な将軍
神尾楓珠 徳川家茂 十四代将軍。十三歳で就任し、和宮と政略結婚。二二九年ぶりの将軍上洛を敢行
岩田剛典 阿部正弘 備後福山藩主。数え二十七歳で老中首座となった若き宰相
北村一輝 鳥居耀蔵 南町奉行。天保の改革で市中を厳しく取り締まり「妖怪」と呼ばれた
柄本明 徳川斉昭 水戸藩主。「烈公」。息子・慶喜を将軍後継とするため立ち回り、井伊直弼と対立

第6弾(2026年8月)——小栗家・勝家ゆかりの人々

俳優 どういう人物か
瀧内公美 たみ 勝海舟の妻・民子。深川の芸者時代に勝と出会い、貧困時代を支える
齋藤潤 小栗忠道 駒井朝温の次男で、小栗家の養子。横浜仏語伝習所でフランス式兵学を修める
飯尾和樹 建部政醇 播磨林田藩主。みちの父で、小栗の義父
草川拓弥 荒川祐蔵 常陸出身の従者。小栗に才を見抜かれ、遣米使節団に随行する
ANI 武笠祐左衛門 小栗家の家老格。小栗の渡米中も留守宅を守る
甲本雅裕 佐藤藤七 上州権田村の名主。農民から武士に取り立てられ、五十四歳で遣米使節団に随行した異色の人

まだ発表されていない役

本日の時点で、徳川慶喜のキャストは発表されていません。そのほか、小栗を処刑した軍監の原保太郎と豊永貫一郎、フランス公使ロッシュ、横須賀製鉄所のヴェルニー、遣米使節の正使・新見正興と副使・村垣範正、道子を会津へ逃がした権田村の中島三左衛門——いずれも未発表です。

薩長側の西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允らも発表されていません。「勝者による歴史ではなく、敗者側の視点から描く」という制作側の説明を踏まえると、比重が従来と違う可能性はありますが、単に発表の順番という可能性も同じくらいあります。

制作スタッフ

  • 脚本——安達奈緒子(大河は初執筆)
  • 制作統括——勝田夏子、深川貴志
  • 演出——西村武五郎、末永創、川上剛、田中諭ほか
  • 時代考証——岩下哲典、門松秀樹

音楽、語り、題字は本日の時点で発表されていません。

物語はいつから始まるのか

NHKのあらすじは「時は1860年」——万延元年の遣米使節から始まる構成を示しています。井伊直弼に取り立てられて渡米し、桜田門外の変で井伊を失ったあと、財政・外交・軍事の要職を歴任し、大政奉還のあとに勝海舟と道が分かれる。そこまでの八年ほどが軸になりそうです。

ただし鳥居耀蔵の役柄説明に「初登城の若き小栗を魅了」とあるので、天保の改革のころ——小栗が十七歳で初登城した天保十四年あたりも、序盤か回想で描かれるのかもしれません。

脚本家が語っていること

脚本の安達奈緒子は、小栗をこう評しています。「高潔さと頑固さは清々しいほどで、混乱の世にあって希望たりえる人」。そして作品の核となる問いとして、「なぜ彼は処刑されなければならなかったのか」を挙げています。

その答えは、いまも出ていません。罪状の根拠となる文書が、一つも見つかっていないからです。

この一覧は随時更新します。