大久保利通暗殺(紀尾井坂の変)とは—内務卿はなぜ出勤途中に斬られたのか。斬奸状と「三十年の計画」

紀尾井坂の清水谷、大久保利通の馬車(イメージイラスト)

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明治11年(1878)5月14日の朝、明治政府の中心にいた内務卿・大久保利通が、馬車で出勤する途中に襲われ、命を落としました。場所は東京・麹町の紀尾井町、清水谷のあたりです。この事件は「紀尾井坂の変」と呼ばれます。

前の年には西南戦争で、幼なじみの西郷隆盛が亡くなっていました。維新の三傑のうち、木戸孝允も前年に病死しており、大久保の死で三人ともが世を去ることになります。

目次

先に答え—紀尾井坂の変とは

いつ 明治11年(1878)5月14日の朝
どこで 東京・麹町区紀尾井町の清水谷(いまの千代田区。清水谷公園に哀悼碑があります)
誰が 石川県士族の島田一郎ら6人(うち1人は島根県士族)
誰を 内務卿・大久保利通(数え49歳)
なぜ 有司専制(一部の役人による政治)への怒り。斬奸状で大久保の罪を5つ挙げました
結果 大久保と馭者の中村太郎が死亡。犯人6人は自首し、同じ年の7月に処刑されました

なぜ大久保利通は狙われたのか

大久保は、明治6年(1873)の政変で西郷隆盛らが政府を去ったあと、内務卿として政府の実権を握りました。地租改正、殖産興業、士族の禄の廃止など、近代国家づくりの改革を強い姿勢で進めていきます。

その一方で、特権を失った士族たちの不満は高まっていました。佐賀の乱、神風連の乱、萩の乱、そして西南戦争。各地の士族の反乱は、すべて政府によって鎮められます。武力で政府を倒す道を断たれた不平士族たちは、政府の中心人物を直接狙うようになりました。

島田一郎ら石川県(加賀)の士族は、西南戦争で西郷に呼応しようとしてかなわず、大久保を討つことを決めたとされます。

事件の朝、清水谷で何が起きたのか

紀尾井坂の清水谷、大久保利通の馬車(イメージイラスト)
紀尾井坂の清水谷、大久保利通の馬車(イメージイラスト)

5月14日の朝、大久保は麹町三年町の自宅を2頭立ての馬車で出て、赤坂の仮皇居へ向かいました。紀尾井町の清水谷にさしかかったところで、待ち伏せていた島田一郎らが襲いかかります。まず馬の脚を斬って馬車を止め、馭者の中村太郎を斬り、馬車から引き出した大久保を斬りました。

大久保には護衛がついていなかったといわれます。犯人たちは犯行のあと、斬奸状を持って自首しました。

大久保の懐には、西郷隆盛からの手紙が入っていたという話も伝えられています。かつての盟友と対立し、その死を見届けた大久保の最期を象徴する話として、よく語られます。

斬奸状は何を訴えたのか

島田らの斬奸状は、大久保の罪として次のような点を挙げていました。

  • 国民の意見を聞かず、政治を一部の役人だけで動かしている(有司専制)
  • 法令をみだりに出し、私情で政治を行っている
  • 急がなくてもよい工事や飾りに国の金を浪費している
  • 国を思う志士を退け、内乱を招いた
  • 外国との交渉で国の威信を損なった

ここに挙げられた「有司専制」への批判は、のちの自由民権運動が掲げた主張とも重なっています。

その朝、大久保が語った「三十年の計画」

事件の朝、大久保は出かける前に、福島県令の山吉盛典の訪問を受けていました。山吉の記録によれば、大久保はこのとき、維新からの30年を三つに分ける考えを語ったといいます。

  • はじめの10年(明治元〜10年):戦乱が多く、国の基礎を創る時期
  • 次の10年(明治11〜20年):内政を整え、産業を興す時期。自分はこの10年に力を尽くしたい
  • 最後の10年(明治21〜30年):後を継ぐ者が国を守り育てる時期

まさに「これからの10年」を担うと語ったその朝に、大久保は命を落としました。

紀尾井坂の変ゆかりの地

  • 贈右大臣大久保公哀悼碑(千代田区紀尾井町、清水谷公園):明治21年(1888)に建てられました。
  • 大久保利通の墓(港区、青山霊園)
  • 大久保利通生い立ちの地(鹿児島市加治屋町):西郷隆盛と同じ下加治屋町で育ちました。

▶ この事件を起こした側の人物

✎ 筆者のひとこと

西郷隆盛を西南戦争で失った翌年、大久保も斬られました。維新の中心にいた2人が1年のうちに相次いで世を去り、明治の政治は次の世代へ移っていきます。

ここからは伊藤博文や大隈重信、西郷隆盛の弟・西郷従道らが政治の中心に立つ時代になっていきます。

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