もし白河を守り抜けていたら——奥羽越列藩同盟が挑んだ東北の防衛線【幕末if】

戊辰戦争のなかでも、東北の運命を大きく左右した戦いがあります。1868年(慶応4年)、奥州の南の玄関口・白河小峰城(しらかわこみねじょう)をめぐって、奥羽越列藩同盟と新政府軍がおよそ100日にわたり激突した「白河口の戦い」です。同盟側は兵力で大きく勝りながら、ついにこの城を奪い返すことができませんでした。もし東北諸藩がここを守り抜いていたら、戊辰戦争の東北戦線はどう変わっていたのでしょうか。まず史実をたどり、そのうえで「もしも」を考えてみます。

※この記事の後半は、史実を踏まえたうえでの「if(もしも)」の考察です。実際に起きた出来事とは区別してお読みください。

目次

白河小峰城はなぜ「東北の南の関門」だったのか

白河は、関東方面から奥州(東北)へ入るための地理的な要衝でした。古来「白河の関」が置かれたことでも知られるように、ここは東北の玄関口。南から攻め上る新政府軍にとっては、白河を突破できるかどうかが、その先の会津や仙台へ進めるかどうかの分かれ目でした。逆に東北側から見れば、白河小峰城で敵を食い止められれば、同盟の本拠地を戦火から遠ざけられます。まさに東北戦線全体のカギを握る場所だったのです。

戊辰戦争の開戦時、この白河小峰城は奥羽越列藩同盟軍が守っていました。会津藩仙台藩をはじめ、周辺の諸藩が兵を出し、南から迫る新政府軍に備えていたのです。

史実:兵力で勝りながら、奪還できなかった100日

1868年5月1日、薩摩藩長州藩を中心とする新政府軍が白河小峰城を攻撃し、これを一日で攻め落とします。指揮を執った新政府軍の参謀・伊地知正治は、少数ながら巧みな用兵で同盟軍を打ち破りました。城を奪われた同盟軍は、その後およそ100日にわたって何度も奪還作戦を仕掛けます。

ところが、兵力ではるかに勝っていたにもかかわらず、同盟軍は一度も白河を取り戻せませんでした。理由は一つではありません。まず、諸藩の寄せ集めであったために統一された指揮系統がなく、各藩がばらばらに動いてしまったこと。次に、装備や戦術が旧式で、近代的な銃火器と散兵戦術を用いる新政府軍に正面から挑んでは損害ばかりが増えたこと。さらに、地形を生かした守りを固める新政府軍に対し、平地から攻め上る同盟軍が不利な戦いを強いられたことも大きな要因でした。数の上では優勢でも、質と組織で劣っていたのです。

【if】もし同盟軍が白河を守り抜いていたら

では、もし同盟軍が白河小峰城を守り切っていたら——あるいは早期に奪還できていたら、歴史はどう動いたでしょうか。

第一に考えられるのは、新政府軍の北上が大きく遅れた可能性です。白河で足止めを食えば、新政府軍は夏のあいだに会津へ攻め込むことが難しくなります。会津若松城(鶴ヶ城)をめぐる激戦や、後述する白虎隊の悲劇も、少なくとも時期や展開が変わっていたかもしれません。

第二に、同盟の結束が保たれた可能性です。現実には、白河での連敗が同盟諸藩の士気をくじき、戦況が悪化するにつれて離反する藩も現れました。もし白河という「南の壁」が持ちこたえていれば、仙台藩や米沢藩といった主力藩が動揺せず、東北全体が一枚岩のまま抵抗を続けられたかもしれません。

第三に、戦いが長期化した場合の政治的な余波です。戊辰戦争が長引けば、国内外の情勢が変化し、諸外国の思惑が絡む余地も生まれます。短期決戦で新政府が主導権を握った現実とは、異なる交渉の余地が生じた可能性も否定できません。

それでも「守り切るのは難しかった」——if の限界

とはいえ、白河を守り抜くのは容易ではなかった、というのが正直なところです。仮に一度や二度、防衛に成功したとしても、根本的な問題は残ります。それは、東北諸藩と新政府軍(薩摩・長州など西南の雄藩)とのあいだにあった、軍事力そのものの差です。新式の銃、洋式の訓練、組織的な指揮——これらの近代化で、東北勢は明らかに後れを取っていました。白河はその差が最も残酷な形で表れた戦場だったともいえます。

では、なぜ東日本の藩は西洋の銃や軍艦、新しい知識の導入で遅れてしまったのか。その構造的な理由については、別の記事であらためて掘り下げます。白河の「もしも」を考えることは、幕末の勝敗を分けた本当の要因を見つめ直すことでもあるのです。

まとめ

白河口の戦いは、奥羽越列藩同盟が兵力で勝りながら敗れた、東北戦線の分水嶺でした。もし白河を守り抜いていれば、新政府軍の北上は遅れ、同盟の結束も保たれ、戦争はより長期化していたかもしれません。しかし、その背後には近代化の遅れという動かしがたい差があり、「もしも」の実現は簡単ではありませんでした。歴史の岐路に立って想像をめぐらせると、幕末という時代の厳しさと面白さが、より深く見えてきます。

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