幕末の日本に、外国から膨大な数の銃が持ち込まれました。そのなかでも、最も多く輸入され、各地の戦場で用いられた小銃の一つが「エンフィールド銃」です。イギリスで生まれたこの銃は、確かな性能と信頼性で、幕末のいわば“ベストセラー”となりました。この記事では、エンフィールド銃がどんな銃で、なぜこれほど普及したのかを解説します。

エンフィールド銃とは——イギリス生まれの施条前装銃
エンフィールド銃は、イギリスが1853年に採用した前装式のライフル銃です(その年式から「1853年式エンフィールド」とも呼ばれます)。銃身に施条(ライフリング)を持ち、ミニエー弾系の弾丸を用いる点では、前回紹介したミニエー銃と同じ仲間にあたります。イギリスの高い工業力を背景に、品質のそろった銃が大量に生産されました。
命中精度と射程に優れ、しかも信頼性が高い。そんなバランスの良さが、エンフィールド銃の何よりの魅力でした。
なぜ幕末で広く普及したのか
幕末の日本では、各藩が競うように新式の銃を求めていました。攘夷か開国か、佐幕か倒幕か——立場は違っても、「近代的な銃がなければ戦えない」という認識は共通していたからです。そこへ、性能が良く、しかもまとまった数を調達できるエンフィールド銃は、まさにうってつけの存在でした。
外国商人を通じて大量に輸入され、薩摩藩や長州藩をはじめとする諸藩が、こぞってこの銃を戦力に加えていきます。品質が安定していたことも重要でした。数をそろえても性能にばらつきがあっては部隊として戦いにくいものですが、工業製品として均質なエンフィールド銃は、その心配が少なかったのです。
エンフィールド銃 スペック(性能一覧)
| 種別 | 前装式・施条銃(ライフルド・マスケット) |
|---|---|
| 装填方式 | 前装(銃口から装填) |
| 発火方式 | 雷管式 |
| 口径 | 約14.7mm(.577インチ) |
| 弾薬 | ミニエー弾系 |
| 有効射程 | 数百m(諸説あり) |
| 発射速度 | 1分間におよそ2〜3発 |
| 製造国 | イギリス(1853年式) |
戊辰戦争での役割
戊辰戦争では、エンフィールド銃は新政府軍・旧幕府軍の双方で数多く用いられました。輸入された施条銃の代表格として、多くの兵の手に握られ、各地の戦闘で火を噴いたのです。旧式のゲベール銃しか持たない部隊に対しては、その射程と精度で明確な優位に立ちました。
幕末の戦いを「銃の性能差」という視点で見るとき、エンフィールド銃は避けて通れません。膨大な数がもたらされ、実際に戦場を支配した——その意味で、エンフィールド銃は幕末の火力近代化を象徴する一挺だったといえるでしょう。
まとめ
エンフィールド銃は、イギリスが1853年に採用した前装式の施条銃で、優れた性能と安定した品質から幕末に大量輸入され、各藩の主力として広く使われました。戊辰戦争でも敵味方を問わず用いられ、旧式銃に対して火力の優位をもたらします。同じ施条前装のミニエー銃や、旧式のゲベール銃との違いは、銃器の一覧で読み比べてみてください。

