ゲベールとミニエーのあいだ——ヤーゲル銃とは

幕末の小銃を「命中精度」という物差しで並べると、滑腔で当たりにくいゲベール銃と、施条とミニエー弾で高精度を実現したミニエー銃のあいだに、もう一つの銃が位置します。「ヤーゲル銃」です。あまり有名ではありませんが、施条を備えた銃として、ゲベール銃よりも正確に狙える一挺でした。ゲベールとミニエーの“あいだ”を埋めるこの銃を紹介します。

ヤーゲル銃のイラスト
ヤーゲル銃(イラスト)
目次

ヤーゲル銃とは——施条を備えた猟兵の銃

ヤーゲル銃の「ヤーゲル(Jäger)」は、ドイツ語で狩人・猟兵を意味する言葉です。もともと狩猟や、森林での戦いにあたる猟兵のために作られた銃で、銃身の内側に施条(ライフリング)を持っていました。そのため、施条のないゲベール銃に比べて、はるかに高い命中精度を誇りました。銃身がやや短めで取り回しやすいのも特徴です。

位置づけ——ゲベールより当たる、しかし…

施条があるヤーゲル銃は、正確さの点でゲベール銃を明らかに上回りました。しかし、施条銃には長らく一つの難点がつきまといます。溝に弾を食い込ませるため、前装で弾を込めるのに力と時間がかかったのです。この装填の難しさは、のちにミニエー弾の発明によって解決されますが、それ以前の施条銃であるヤーゲル銃は、「よく当たるが、込めるのに手間がかかる」という性格を持っていました。

つまりヤーゲル銃は、「当たらないが速く込められるゲベール」と「よく当たり、しかも速く込められるミニエー」のあいだにある、過渡期の銃だったといえます。

ヤーゲル銃 スペック(性能一覧)

種別 前装式・施条銃(ヤーゲル/猟兵銃)
装填方式 前装(銃口から装填)
発火方式 雷管式(初期は燧石式)
特徴 施条ありで高精度・やや短い銃身
由来 ドイツ語圏(猟兵・狩猟用)

幕末での使用

幕末の日本にも、こうしたヤーゲル銃が輸入され、用いられました。ゲベール銃よりも正確に狙えるため、精度を求める場面で重宝されたと考えられます。もっとも、装填に手間のかかる旧来の施条銃は、ミニエー銃が普及するにつれて主役の座を譲っていきました。それでも、施条による高精度という利点を先取りしていた点で、ヤーゲル銃は銃の進化の一段階を担った銃だったといえます。滑腔のゲベール銃や、施条前装の完成形であるミニエー銃と読み比べると、その位置づけがよく分かります。

まとめ

ヤーゲル銃は、ドイツ語圏由来の施条を備えた前装銃で、滑腔のゲベール銃より高い命中精度を持ちながら、装填に手間がかかるという過渡期ならではの性格を帯びていました。ミニエー弾登場以前の施条銃として、ゲベールとミニエーのあいだをつなぐ存在です。ほかの火器は銃器の一覧もご覧ください。

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