『逆賊の幕臣』のあらすじ—2027年大河はどんな物語か。原作はある?主人公・小栗忠順の生涯でたどる

万延元年、遣米使節としてポーハタン号で太平洋を渡る小栗上野介忠順(イメージイラスト)
この記事は、2027年NHK大河ドラマ『逆賊の幕臣』(2027年1月10日放送開始/主演・松坂桃李さん)の関連記事です。
大河『逆賊の幕臣』特集 に、関連記事とキャスト一覧をまとめています。

『逆賊の幕臣』は、横須賀に造船所をつくりながら、取り調べも裁判もないまま斬られた幕臣・小栗忠順(小栗上野介)の生涯を描く、完全オリジナルの大河ドラマです。原作小説はありません。放送開始は2027年1月10日、主演は松坂桃李さん、脚本は安達奈緒子さん。大河ドラマとしては第六十六作にあたります。

放送前のいまは、まだ各話のあらすじが出ていません。ただ、主人公の生涯そのものは史実としてはっきりしています。物語がどこをたどることになるのか、おおよその見当はつきます。このページでは、発表されている作品情報と、あらすじの下敷きになる史実を並べました。

目次

先に答え—『逆賊の幕臣』はどんな話か

  • 主人公は小栗忠順。文政十年(1827年)生まれの旗本で、江戸幕府の勘定奉行や外国奉行を務めた人です。
  • 日本初の遣米使節としてアメリカへ渡り、帰国後は横須賀製鉄所(のちの造船所)をはじめ、近代化の仕組みを次々と幕府に持ち込みました。
  • ところが幕府が倒れたあと、新政府に「逆賊」とされ、取り調べもないまま斬られます。その汚名が晴れるまでに六十四年かかりました。

「勝海舟のライバル」と呼ばれた人物です。ドラマでも勝海舟(大沢たかおさん)との関係が軸のひとつになると発表されています。

作品の基本情報

タイトル NHK大河ドラマ『逆賊の幕臣』(ぎゃくぞくのばくしん)
放送 2027年1月10日放送開始(NHK総合)。大河ドラマ第六十六作
主人公 小栗忠順(小栗上野介)
主演 松坂桃李さん
脚本 安達奈緒子さん
制作統括 勝田夏子さん、深川貴志さん
原作 なし(オリジナル脚本)

原作はありません

「原作は誰の小説ですか」とよく聞かれますが、『逆賊の幕臣』に原作小説はありません。安達奈緒子さんによるオリジナル脚本です。

小栗忠順を扱った小説や評伝はいくつもありますし、司馬遼太郎が随筆で小栗を「明治の父」と評した一節はよく知られています。けれどもドラマはそれらの映像化ではありません。ですから、原作を先に読んでおけば筋がわかる、という種類の作品ではないことになります。

その代わり、史実の流れを知っておくと見やすくなります。以下はその下敷きです。

あらすじの下敷きになる史実—小栗忠順の生涯

旗本の子として生まれ、安積艮斎の塾で学ぶ

小栗忠順は文政十年(1827年)、江戸・神田駿河台の旗本屋敷に生まれました。家は二千七百石の旗本で、将軍に直接お目見えできる家柄です。父は小栗忠高。少年期は安積艮斎の塾に通い、剣術と砲術も学びました。

「1827年 小栗上野介ここに生まれる」のプレート。生誕地の神田駿河台に埋め込まれています
「1827年 小栗上野介ここに生まれる」のプレート。生誕地の神田駿河台に埋め込まれています

安政七年、遣米使節としてアメリカへ

大老・井伊直弼のもとで登用され、安政七年(1860年)、日米修好通商条約の批准書を交換する使節団の一員としてアメリカへ渡ります。役目は目付、つまり一行を監察する立場でした。

このとき護衛として太平洋を渡ったのが咸臨丸で、勝海舟が乗っていました。小栗が乗ったのは本隊のポーハタン号です。小栗はアメリカで金貨銀貨の分析実験に立ち会い、日本の小判が不当に安く交換されていることを数字で突きつけました。

勘定奉行として—通貨、関税、そして横須賀

帰国後、外国奉行や勘定奉行をたびたび務めます。やったことは一つではありません。関税の交渉、兵庫商社の構想、日本初の本格的洋式ホテルである築地ホテル館、そしてフランスの協力を得た横須賀製鉄所です。

横須賀製鉄所は、のちの横須賀造船所であり、日本の造船業の出発点になりました。小栗はここで「たとえ幕府が倒れても、この施設は日本に残る」という趣旨のことを語ったと伝えられています。

勝海舟との対立

慶応四年(1868年)正月、鳥羽伏見の戦いに敗れた幕府の中で、小栗は徹底抗戦を主張しました。艦隊で薩長の補給線を断ち、箱根で迎え撃つという具体的な策まで示しています。

勝海舟記念館(旧清明文庫)。勝が晩年を過ごした洗足池のほとりに建っています
勝海舟記念館(旧清明文庫)。勝が晩年を過ごした洗足池のほとりに建っています

しかし十五代将軍・徳川慶喜はこれを採らず、恭順を選びました。小栗は罷免されます。代わりに幕府の始末を任されたのが勝海舟で、のちに江戸無血開城へ進みます。同じ幕臣でありながら、二人はまったく逆の道を選びました。

罷免、そして権田村へ

職を解かれた小栗は、知行地である上野国権田村(現在の群馬県高崎市倉渕町)へ移り住みます。家臣たちを連れての引っ越しでした。

「小栗上野介の寺」の標柱。東善寺の入口に立っています
「小栗上野介の寺」の標柱。東善寺の入口に立っています
東善寺へ上がる道。権田の集落のなかにあります
東善寺へ上がる道。権田の集落のなかにあります
東善寺の本堂。小栗はここを仮の住まいにしていました
東善寺の本堂。小栗はここを仮の住まいにしていました

新政府の東山道総督府は、この移住を「謀反の支度」と見ます。観音山に建てかけていた屋敷を「砲台」と呼び、村の自衛のための大砲二門と小銃二十挺を「武器の備蓄」と呼びました。小栗は大砲を自分から差し出しましたが、疑いは消えませんでした。

閏四月六日、水沼河原

慶応四年閏四月六日、小栗は烏川の河原、水沼で斬られます。逮捕の翌日、午前十一時ごろのことでした。取り調べも裁判もありません。翌日には養子の又一(忠道)も高崎で斬られています。

水沼橋から見た烏川の河原。小栗が斬られたのは、この河原です
水沼橋から見た烏川の河原。小栗が斬られたのは、この河原です
河原に建つ小栗上野介の顕彰慰霊碑
河原に建つ小栗上野介の顕彰慰霊碑
碑のかたわらに立つ標柱。「罪なくして此所に斬らる」とあります
碑のかたわらに立つ標柱。「罪なくして此所に斬らる」とあります

この場面が物語の終盤に置かれることは、まず間違いないと思われます。

残された家族と、六十四年後

身重だった妻のみちは、会津へ二十二日かけて逃げのびました。生まれた娘・国子が小栗家をつないでいきます。かつて小栗に恩を受けた三野村利左衛門が、この家を支えました。

「逆賊」の汚名が公に晴れるまでには、それから六十四年かかっています。

筆者から—東善寺でご住職にうかがった話

東善寺のご住職と筆者夫婦
東善寺のご住職と(筆者夫婦)

放送が始まる前に、一度は権田村を訪ねてみてほしいと思っています。私は妻と二人で東善寺にうかがいました。小栗が自分の家を建てるまでのあいだ、仮に住んでいたお寺です。

ご住職は、その代々のお寺を継いでこられた方です。小栗が大好きで、ご自身で調べに調べてこられていました。

いちばん印象に残っているのは、ご住職の憤りです。「勝海舟は護衛艦でサンフランシスコへ渡って往復しただけ。小栗は世界を一周して帰ってきた。本来なら小栗にこそスポットが当たるはずだ」——そういう意味のことを、強い調子でおっしゃいました。

遺品館では小栗の遺品をいろいろと見せていただいて、小栗のことを少し知れた気分になりました。ただ、遺品はとても少ないのです。資料によれば、新政府軍が小栗家の品を商人に売り払い、その金を軍備にあてたのだといいます。ひどいことをするものだと、私個人も思いました。

しかも、売られたものが一つひとつ記録に残っている。晒(さらし)、ふんどし——そんなものまで細かく書き留められていて、私は悲しくなりました。

残っているもののなかに、小栗が水沼の河原へ向かうときに乗った駕籠があります。私はそれに触れることができました。小さな窓の戸。ここは間違いなく、小栗自身が手をかけたところだと思います。斬ったあと、その駕籠は雑に置き捨てられていたそうです。

小栗が最期に乗った駕籠(東善寺の遺品館)
小栗が最期に乗った駕籠(東善寺の遺品館)

終焉の地は、探して見つけたわけではありません。姉妹観音へ向かう途中、橋の上からふと目に入って、はっと気づきました。ここだ、と。

「水沼橋」の親柱。この橋の上から河原が目に入りました
「水沼橋」の親柱。この橋の上から河原が目に入りました

車を停めて橋から土手へ下りると、そこに石碑が立っていました。「罪なくして此所に斬らる」。これを読んだとき、胸にじーんとくるものがありました。これほど有能な人物を、何の取り調べもなく斬ってしまう。近代の日本にとって、大きな損失だったと思います。

そんなことを思いながら、小栗が屋敷を建てようとしていた土地をめぐり、帰路につきました。

小栗を主人公にした大河ドラマ『逆賊の幕臣』が始まります。それに合わせて、見てきたこと、聞いてきたことを記録に残していこう——そう思って、この歴史ブログを書いています。

ドラマの見どころ

ここから先は、発表されている情報からの見通しです。

一つは、勝海舟との対比です。同じ幕臣で、同じようにアメリカを見て、それでも最後に正反対の道を選んだ二人。大沢たかおさんが勝を演じると発表されており、この関係が物語の背骨になると思われます。

二つめは、「作ったものは残る」という主題です。横須賀も、貨幣制度も、郵便の構想も、小栗が死んだあとに実を結びました。本人はそれを見ていません。

三つめは、裁かれないまま殺される理不尽さです。タイトルに「逆賊」とわざわざ置いたこと自体が、「本当にそうだったのか」という問いかけになっています。

主な登場人物

役名 演じる人
小栗忠順 松坂桃李さん
勝海舟 大沢たかおさん
みち(妻) 上白石萌音さん
くに(母) 鈴木京香さん
小栗忠高(父) 北村有起哉さん
小栗忠道(又一) 齋藤潤さん
井伊直弼 岡部たかしさん
安積艮斎 中村雅俊さん
三野村利左衛門 荒川良々さん
栗本鋤雲 青木崇高さん
建部政醇 飯尾和樹さん
荒川祐蔵 草川拓弥さん
佐藤藤七 甲本雅裕さん
徳川斉昭 柄本明さん
阿部正弘 岩田剛典さん
鳥居耀蔵 北村一輝さん
吉田松陰 中村倫也さん
高杉晋作 寛一郎さん
島津久光 斎藤工さん
島津斉彬 西岡德馬さん
孝明天皇 眞栄田郷敦さん
明治天皇 奥野壮さん
岩倉具視 山中崇さん
徳川家慶 宅麻伸さん
徳川家定 ふかわりょうさん
徳川家茂 神尾楓珠さん
滝川具挙 宮野真守さん

一人ずつの解説は 大河『逆賊の幕臣』特集 にまとめています。

各話のあらすじについて

放送が始まったら、第一回から順に「あらすじと史実」を書いていく予定です。ドラマで描かれた出来事が実際にはどうだったのか、どこが脚色なのかを、回ごとにたどります。

参考にした資料

  • NHK大河ドラマ『逆賊の幕臣』出演者発表に関する各社報道(2026年)
  • 当サイトの小栗忠順関連記事(史実部分の典拠は各記事の参考資料に記載)
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